やまと(倭)は国のまほろばBlog

美しい国日本を守るため歴史、経済、政治面から社会についての思想的考察を行います

「静かなる大恐慌」柴山桂太著

この本は最初に著者が述べている通り、進行中の経済危機について分析すると共に、先のゴールを示そうとしたものです。現在の世界経済危機は静かなる大恐慌とも言うべき巨大なインパクトを持ち、その原因はグローバル化にある。そしてそれは国家間の対立を深刻化させ、国内政治の危機も招くものでもある。というスケールの大きな分析と提言になっています。

 1.現在の経済危機のインパク

    今回の一連の経済危機は、2002〜2008年まで続いた世界的な信用バブルが崩壊した所から始まっていますが、それは本質的には大恐慌に匹敵する水準にある。

アメリカの住宅価格や家計債務の対GDP比は2000年頃から急激かつ未曾有のレベルまで上昇しそれを調整する局面が続いており、規模的にもそう言って差支えない水準にあると分析されています。こういったバブルの異様な膨らみ方は、グローバル化のもとで行われ、世界中から資金が集まった事に起因する。そしてグローバル化が招く経済危機は一つの国から拡散し、事後に対策するしかないと言う状況を生み出すが、それは正に新自由主義の考え方がベースになっている。

2.繰り返すグローバル化とその帰結

  グローバル化は今回が初めてではなく、19世紀後半から始まり戦前の大恐慌を招き、二つの大戦を経て収束しています。

第一次グローバル化は1870年頃から始まり、輸出が拡大し資本移動も活発になった。その結果ドイツの工業が発達しヨーロッパ諸国のパワーバランスが変化し、第一次対戦に結びついた。かつ1929年の大恐慌を起点とし各国が脱グローバル化に切り替わってゆき、経済戦争に突入して第二次対戦へ繋がった。と言う状況は現在の米中間での経済問題や中国の軍拡によるパワーバランスの変化と同様です。

経済戦争の真因はグローバル・インバランスにあり、世界経済の安定化を図る為には各国が内需を増やす事が大切であり、国内の消費、投資を増やす努力、所得の格差を縮める努力が必要だと提言されています。

→これに関しては、現在選挙戦で生産性革命、消費税のアップなど論戦になっていますが今現状は消費税アップは難しいかと。消費マインドをもっとあげる施策が必要です

 

ymahoroba.hatenablog.com

 

3.自由貿易と国内政治の関係

  グローバル化はITを中心とした情報の拡散や格差の拡大を進め、経済危機にとどまらず国内政治の危機も伴う。

グローバル化が引き起こす国内の産業衰退などに政治が絡まざるを得ず、効率性を重視する市場経済原理と国民生活の安定を求める国内政治原理には常に齟齬が存在する。

結論としては、グローバル化に制限を加え、各国の主権を維持し、国家単位で政治や経済の運営を行う道が正しい。全世界的にそういった取組が出来ればいいが難しい現在では、グローバル化を進めつつ、それによって生じる経済的打撃を埋め合わせる為の失業、福祉政策を増やしてゆく事になる。但し必ず起きるのがグローバル化の反転であり、保護主義的な動きは既に世界中で見られます。

第一次グローバル化は二度の大戦で収束しましたが、そうならない為にも各国レベルでグローバル化路線を修正してゆく試行錯誤が大切になってゆきます。

最後に日本の診断と今後の対策について

  日本においては、失われた20年の中で進められた経済の自由化により、経済を成長さするどころか停滞に陥り、新たに別の問題をもたらしている。

競争力のあるトヨタなどの企業は海外に生産拠点を移すことにより、業績を伸ばしましたが、国内の労働者は海外の賃金の低い労働者との競争が進み賃金が上がらずグローバル化の恩恵を受けていない。

 

ymahoroba.hatenablog.com

 

かつ日本企業が海外依存を高めた結果、海外からのショックに弱くなっている。又大都市と地方の格差、正規労働者と非正規労働者との格差が広がり地方がどんどん衰退していると言う問題が大きくなってきています。

こういった問題に対しては、当面大きな政府路線を進めながら福祉を手厚くしてゆく必要があるが、それも行き過ぎると弊害が生まれる。

グローバル化は必ずやってくる。各国は内需拡大、いい意味での規制を設ける等社会的公正や政治的安定を実現してゆく施策をとってゆく必要があるというのが結論です。

いずれにせよこの危機は単に経済をどうするといった問題にとどまらず、社会をどう考え対応してゆくか。その為には政治の力が必要になり、国民一人一人が問意識をもち、行動してゆく必要性を訴えています。その意味では戦後、日本は経済一辺倒で進み、1980年代からのグローバル化に対しては政治と経済を切り離したような形で進んできた。戦前の日本に戻れなどというつもりはありませんが、人、国家といった事を改めて考えさせられる一冊です。

静かなる大恐慌 柴山圭太 集英社新書