やまと(倭)は国のまほろばBlog

美しい国日本を守るため歴史、経済、政治面から社会についての思想的考察を行います

「グローバリズム その先の悲劇に備えよ」中野剛志、柴山圭太著

本書は、気鋭の評論家である中野剛志、柴山圭太両氏が現在の世界、日本の状況を読み説くもの。具体的には2016年イギリスのEU離脱、2017年アメリカ トランプ大統領誕生を始めとし、世界で変化しつつある思想の座標軸を明確にしてゆきます。

 1.グローバル化の歴史と課題

 グローバル化は、19080年代から世界中でそれが正しいとされてきたイデオロギーですが、その歴史は一直線で進んできたものではなく第一次グローバリズム(19世紀後半から20世紀初頭(1914年まで))と今回の1980年代から始る大きな流れが存在します。その流れが2008年のリーマンショックを境にして終焉に向かおうとしているのが現在だという読み解きです。

グローバル化は社会秩序を不安定にするだけではなく、国家の対立を激しくし、やがて世界各地で政変や戦争を引き起こす。現に歴史は何度もそのように動いてきたとされますが、それは100年前にカール・ポラニーの「大転換」に分析されているように、

互酬や再配分の基礎となる共同体が破壊されれば、人々がそれを取り戻そうとして「社会の自己防衛」に向かうのは当たり前で、1930年代に起きた「大転換」は、それ以前の自由市場のイデオロギーに原因があった。

「自然、人間、貨幣」の三つを市場の論理に任せると、人々の性格が滅茶苦茶になって、社会が破壊される。

 ということが原因ということです。民衆の怒りがグローバル化を止める。それがブレジグットであり、トランプ大統領の出現という形で現れたのだと。

2.ブレジグットの意味と国民主権

 イギリスがEU離脱を決めたことは経済的には厳しい状況を招くかもしれませんが、イギリス国民が求めたのは国家主権の回復であり、EUが課す様々な規制に対し反発し、自分の国の事は自分が決める。という事が真の理由です。それは目先の経済より重要なのは国民の自己決定権を維持するという事であり、民主政治を取り戻す事にある。

EU含め一部のエリートがグローバル化を信奉するのは、民主政治への懐疑であり、経済から政治を切り離し、無知蒙昧な民衆の意見を聞かず、グローバル化することが正しいと思っている。それへの反発でもある。

そういった意味では、イギリス、アメリカ、フランスにおいて、グローバル化すべきか反グローバル化なのかということが争点となり国民投票が行われてきたことを日本人も理解しなければならないのですが、日本にはこういった軸が存在しない。

これは、日本人の主権が奪われてしまっていることに慣れてしまい、主権意識そのものが消えてしまっているのではないか。ということは今後、脱グローバリズムの流れが進んでゆくと、何をもって判断してゆくべきなのかわからなくなり、非常に大きな影響を受けるのが日本ではないかと問題提起されています。

ラニーが「本来は、社会に市場が『埋め込まれるべきだ』」という趣旨の事を言っていると書かれていますが、けだし明言かと。

3.資本主義の本質と今後の対応

  資本主義の本質とは、シュンペーターが言う所の創造的破壊であり、資本主義の前提である共同体的なものを自ら壊してしまう。そして結局資本主義は自分の成長の源泉を自ら絞め殺し官僚化して社会主義になる。とされていますが、これは日本の会社を見ていると良くわかります。日本的経営という仕組みが無くなり、一部の人間がビジョンという形で様々な方針を打ち出し、進めてゆく。そこに又ギャップが生まれる。

 

グローバル化も経済の長期停滞も戦争の危機も歴史的に見れば何度も繰り返しており、我々も歴史から学ぶ必要があるし、不確実性に耐え、多様性を求める政治の力を取り戻してゆかなければならない。人間は実存的危機がないと本気にならない。そういった意味では、日本も本気になれるかどうかの時期に来ている。と言う結論ですが、戦後70年の歩みを含め、考えさせられる一冊です。

 グローバリズム その先の悲劇に備えよ

     集英社新書